米国の心理学者、スーザン・ベイカーによる長寿国とボケない秘訣

米国の心理学者、スーザン・ベイカーの研究で、数年前に長寿国について発表された内容が興味深く印象に残っています。


それは、世界に一カ所だけ男女とも100歳を超える長寿国があり、それも、ボケることも少なく、心豊かに生きる人々がいること。そこはイタリアのサルディーニャ島で、イタリア本土とは300キロ離れたコルシカ島とチュニジアの間の地中海に浮かぶ小島。全体で100歳を超える人の割合は6倍で、 北アメリカと比べると10倍という高率だそうです。


その謎解きを調べ、この土地の景観や習慣・遺伝子を調べたところ、これらに影響するのは25%で、75%はライフスタイルとのこと。100歳を超えて生きるには 何が必要なのか? 長寿者のどのような習慣が良いのか?この村の良さは 街並みの美しさではなく、家が密集している。家と家の間隔が狭く、通りや路地が 入り組んでいる。つまり住民は常に誰かと顔を合わせる生活をしています。ここ長寿国の住人は 寿命を迎えるまでずっと人々に取り囲まれて過ごし、いつも周囲には 拡大家族と友人達、近所の人や聖職者、バーや食料品店の店主がいる。いつも誰かが傍にいたり、立ち寄ったりしています。ぽつんと取り残されて寂しく暮らす人はいません。


スーザン・ベイカーは習慣についても詳しく調べました。食事や運動や既婚者かどうか、どのくらい医者にかかるか、喫煙や飲酒をするかどうか。きれいな空気か否か、高血圧の治療をしているか否か。体重が重いか軽いか。飲酒の習慣を断ったか、ほどほどに飲む程度か、タバコを吸わないか、前は吸っていても禁煙したか。習慣の25%とライフスタイルの75%の要因も調べ、「長寿の可能性が最も高くなる 2つの要因」は、まず 親しい人がいるかどうか、急にお金が必要になったとき、借りに行ける相手がいるか、体調が悪くなったとき、医者を呼んでくれたり病院に連れて行ってくれたりする人がいるかどうか。あるいは絶望して生きる意欲を失いかけた時に、寄り添ってくれる人が人が いるかどうか。何人かいてくれたら長生きする可能性がぐんと高まるわけです。そして、日々の活動でどれだけ交流があるか。結びつきが強い人だけでなく、とりわけ身近な人に限らず、毎日近所の人と話しますか?ポーカーをしたり、読書クラブに加わったりしているか?こうした交流の有無がどれだけあるかが最も強い手がかりの1つだという。


人は、直に顔を合わせていると神経伝達物質がどっと放出され、ワクチンと同じような効果があるという。誰かと目を合わせたり、握手したり、ハイタッチしたりするだけでもオキシトシンを分泌され、それによって信頼のレベルが高まり、コルチゾール濃度は下がるので 、ストレスが軽減されます。また ドーパミンが作られて気分がいくらか高揚し、痛みが和らぎます。(自然のモルヒネのようなものだと。)


また、メリーランド大学の神経科学者エリザベス・レドケイが直に人と交流しているときと、変化のないものを見ているときとで脳内でどのような変化が起こるか調べたところ、直に人と会っている時の方が脳の活動に差があることを示しました。


さて、なぜ女性は男性よりも長生きなのか?1つの大きな理由は 女性の方が生涯にわたって 顔と顔を合わせる関係を大事にして維持するということです。新しい研究結果によると、直接的な友人関係によって病気や衰弱に対抗する生物的なバリアができます。これは人間だけではなく霊長目の他の動物にも当てはまることです。人類学者ジョーン・シルクによるメスのヒヒの研究では、中核となるメスの友だちがいる場合、コルチゾール濃度によるストレスのレベルが低く、長く生きて子孫を多く持つことが 分かりました。


このような直接的な交流の力は、社会的関係を維持している人たちの間で認知症の発症率が低いことに 表れています。乳ガンに罹った女性でも 孤独な人に比べて生存率が4倍も高いのはその為です。


サルディーニャ島の 村民のように 自分が所属しているという感覚は女性だけでなく生物として欠かせないものです。人と人との直接的な交流を都市や職場や行動目標に採り入れるようにすれば、免疫系が強化され、血流や脳の中に幸福感を生むホルモンが増え、認知症リスクの軽減だけではなく、長寿の可能性が高まるでしょう。